hyperMILLの活用により成し遂げた、企業の進化と時代に沿った業務内容の拡張
株式会社五十嵐工業所 | 山形県 日本
株式会社五十嵐工業所は山形県鶴岡市に本社を構える、1952年創業の部品加工メーカーです。創業からしばらくは汎用機による部品加工や溶接を主としつつ製缶にも対応していましたが、2006年に門形五面加工機を導入したことを一つの契機として、半導体製造装置向けの架台や大物機械部品などの製造も手掛けるようになり、大小あらゆるものの一貫生産を請け負う「何でも屋」として取引先から重宝される存在になりました。
しかしそこから時代の経過と共に、設備の老朽化、熟練技能者の高齢化や退職、若手人材確保の難しさといった課題が少しずつ表面化し始め、加えて特定の取引先への依存度の大きさという問題も抱えるようになりました。
そういった中で危機感を感じていた同社・専務取締役の五十嵐康太氏が先導役となり、2019年11月に5軸マシニングセンタを導入し、新規分野参入へと舵を切りました。
同社にとって初の5軸加工機ということもあり機種選定にあたっては様々な情報の精査、同業他社の見学なども積極的に行い、最終的にはDMGMORI・DMU50を採用しました。
加えて当然のことながら、そのプログラミングのためのCAD/CAMも必要となり、それまで主に2次元加工用として使用していた既設ソフトウエアのアップグレードや他の新規システムなどとの比較検討を行ったうえで、hyperMILLの導入を決定しました。
「hyperMILLのデモを見た際、他のシステムと比較して圧倒的な違いを感じたのは”パス作成の容易さ”と”干渉チェックの正確性”でした。」
同社 専務取締役 五十嵐康太 氏
これまでは大物製缶などが中心であったという背景もあり、既設ソフトウエアでは出力したプログラムをそのまま使用することはほとんどなく、必ず加工現場側で多くの修正や現物合わせを行わざるを得ませんでした。しかし、5軸加工ではそういった運用は現実的ではないと判断しており、かつ導入前からの思惑として、プログラミング作業は加工経験のない女性でも行えるようにしたいということもありました。そこで重要だったのがプログラミングの「容易さ」と「安全性」でした。この点においてhyperMILLは他のシステムと比較して圧倒的な優位性があったと評価され、正式採用に至りました。
重要視していたサポート体制も期待以上
さらに、導入後に実感したもう一つの決定的な成功要因は、OPEN MINDによるサポート体制でした。「(加工未経験のプログラミング担当者も存在するため)初期導入時のトレーニング後も質問が絶えなかったにも関わらず、今に至るまで丁寧に対応・支援してもらえていることが、5軸加工機のスムーズな立ち上げと継続した安定運用の大きな支えになっています」と振り返ります。
一方で、設備導入してまもなく新型コロナ禍が本格的な猛威を振るい始め、従来の仕事が軒並みストップし業績に大きな影響を与える中、5軸加工に取り組むきっかけの一つであり、hyperMILLを用いた最初のターゲットワークでもあった自動車向け金型だけが安定した売り上げを残します。もともとは既設の横型中グリ盤などを駆使した試作で結果を残して量産の正式受注に至った製品ですが、思い切って5軸加工機での生産に踏み切った五十嵐専務は「あのタイミングで5軸機とhyperMILLを導入していなかったら、今の五十嵐工業所はありません」と断言します。5軸設備で加工した金型は既設機を用いたものよりも非常に高い品質で仕上がっており、こういった結果を出し続ければ取引先は間違いなく自社を評価し信頼してくれるという確信に至ったそうです。
その後も従来の仕事が思うように盛り返してこない反面、5軸関連の仕事については順調に受注が続き、2021年4月にはニイガタマシンテクノ・HN50E-5Xを、さらにその翌年となる2022年5月には新たな取り組みとして複雑なチタン製品の加工を目的にDMGMORI・DMU65 FD monoBLOCKを導入するとともに、この間に既存建屋を恒温工場へと改修して環境の整備も行いました。
数年前からは、少し特殊な鋳物加工の量産に取り組むことになりました。そこでは加工条件などのノウハウ構築と共に、採算を合わせるための工程集約・加工時間短縮が欠かせないものでしたが、hyperMILLと5軸加工機がそれを可能にしました。中でもhyperMILLの”最適化荒加工”はパス作成作業の効率、そして加工自体の効率が非常に高く、リードタイムの短縮に大きく寄与し、今でも引き続き仕事の柱の一つとなっています。
(ある程度の数モノであれば) 仮に単価は安くとも、蓄積したノウハウと5軸加工機をフル活用した工程集約、そしてhyperMILLによる効率的なプログラミングにより、十分に採算の合う仕事へと変貌を遂げている事実が同社では見て取れます。
さらに2025年に入り、ニイガタマシンテクノ・HN63E-5XWとDMGMORI・DMU50(2号機)を導入し、生産設備の更なる増強を続けています。
五十嵐専務は「ここが勝負どころだと考え立て続けに設備投資を行いましたが、結果的にはそれが良かったと思います」と言い切ります。現在、5軸加工事業は同社売り上げ全体の1/3程度ですが、今後これを1/2にまで引き上げることを目標としています。五十嵐専務が考える”モノづくりの基本”とも言える従来事業も大事にしつつ、5軸関連事業との両立実現に向け日々努力を続けています。
また昨今では政府主導による働き方改革への対処という点において、複数パレットを搭載した5軸加工機による休日・夜間無人運転などを活用して、売り上げを維持しつつオーバータイムワークを極力減らし、従業員のワークライフバランス改善にも力を注いでいます。
最後に、五十嵐専務に今後のビジョンについて語ってもらいました。
目指すのは”生産性”と”人間性”の両立
同社では省人化・自動化を駆使した”生産性向上”は製造業にとって非常に重要な課題であると考える一方で、人が完全に介在しなくなるモノづくりは「なんだか冷たい」と感じており、昔から今に至るまで引き継がれている人間性を核とした”ロー・テクノロジー”の部分も大事にしています。一例として、五十嵐専務の個人的なつながりで数年前からフィットネス機器の製造を手掛けていますが、これ自体での採算を考えるのではなく、これまでに培ってきた溶接や組み立てといった伝統的な加工技術も重要なものとして次世代に引き継ぎつつ、自社制作したこの器具を社内に置いて実際に使ってもらうことで社員の健康増進にも繋げて、末永く安心して働ける企業にしていきたいという想いから請け負っています。
“頭の中にあって、まだ世の中に無いものを創り出す”
とはいえ当然のことながら事業全体の採算を度外視している訳では決してなく、5軸加工分野を確固たる今後の柱の一つとしてさらに成長させていくことこそが、目指すものを実現するための絶対条件だと五十嵐専務は言います。同社創業当時からの理念である「頭の中にあって、まだ世の中に無いものを創り出す」という金言を受け継ぎつつ、今後も更なる成長を目指しています。